玉川頭首工は、玉川から引水して仙北平野地域約1万ヘクタールの農地へ水を供給する基幹施設です。
導水した水は農地を潤すだけではなく、生活用水や防火用水、豪雪時の消流雪用水等としても用いられており、地域の生活を支える多面的機能も有しています。
玉川を水源とした昔からの堰は、国営仙北平野農業水利事業により1号幹線用水路を中心とする基幹施設に集約され、玉川頭首工は玉川からの取水を一手に担っています。
上流の発電所と連携しており、24時間体制で用水管理センターから遠隔監視・制御されています。
昭和13年完成
・最大取水量 1.80立方メートル/s
・堤長 29.35m
・堤高 1.80m
・取水門 2門
七滝用水を丸子川から取水する関田頭首工は、旧六郷町の六郷東根字上関田地内にあり、昭和13年、美郷町の877haをかんがいする施設の要として、数ヶ所あった取水堰を県営用水改良事業によって統合築造されたものです。
その後、昭和30年6月の水害による土砂吐水門越流部堤体及び水叩等の決潰、昭和48年7月の水害による護床工の流出で、それぞれ復旧がなされたものの、近年土砂吐水門、取水水門及び取水槽等の摩耗が著しく、全般的に老朽化が進み再度決潰流失の危険が大きくなり、昭和54年度から県営大規模用排水施設整備事業により全面的な改修を行い、57年に完成しました。
昭和13年完成 円筒型サイフォン式
・オリフィス 180孔
・最大流入量 1.80立方メートル/s
・1孔あたり 0.01立方メートル/s
関田円型分水工は、六郷扇状地の扇頂部にあり、農業用水を下流域へ安定供給するために作られた施設です。
上流の関田頭首工によって丸子川から取水した水は、この施設の円筒状の貯水槽に導水され、周囲に開けられた180のオリフィス(孔)から出た水を10ヶ所の堰に分けて流しています。
例えば、全農地面積中の2割にあたる農地に向かう堰には、36の穴から出た水を分配することで、農地面積に比例して平等に配分することができます。
この様式は「円筒型サイフォン式」といい、扇状地の地形を巧みに利用して配分するもので、当時最も進んだ分水法で秋田県では唯一の施設です。
縦断図
平面図
昭和10年完成 中心コア型アースダム
・総貯水量 196,000立方メートル
・満水面積 3.80ha
・堤高 12.90m
・堤長 125.00m
丸子川を遡った黒森山の中腹にある潟尻沼は、その昔、男潟女潟と呼ばれる自然の池沼に人の手を加えて貯水したものといわれ、この水を引水して新田開発が行われ「潟尻村」が出来たとされています。
享保15年(1730)の「六郡郡邑記」によれば、潟尻村は40年以前に開かれ、肝煎(世話人)は六郷東根村が兼ねていましたが人家はなく、潟尻沼は六郷川内池村が管理していました。
旧六郷町明治小史によれば、慶安元年(1648)に築造され天神堂、野荒町、境田、岩野町、六郷東根などの用水であったとされ、これが七滝用水の起源と言われています。
明治元年(1868)4月9日に潟尻沼が決潰して大洪水を起こし、六郷東根の字筑後屋敷の東より護岸の堤を破り、荒川の水は急流となって西に注ぎ六郷町の北(現在の西高方町)に押し寄せて本館の出川方面を襲ったと言われています。
また、大正9年に潟尻沼は数千円をもって増築されましたが、翌10年12月堤防の一部が決潰し1,005円の工事費でこれを復旧しました。
更に大正15年(1926)6月及び7月7日にも決潰しましたが、その後関係町村で協議の上、県に陳情を重ね、県当局の設計によって9,000円の工事費をもって昭和元年より2年春にわたって増築工事が行われました。
その後、堤体の漏水、法面の洗掘、法尻の軟弱化など老朽化が目立ち、また余水吐放水路は素掘で洗掘され、取水装置の漏水も甚だしく全般的に危険な状態となっていました。
このようなことから、老朽ため池等整備事業により、堤体の漏水防止や法面保護を行うとともに余水吐については設計基準によって全面的に改修するほか、取水施設もタワーによる取水方法で改修しました。
この事業は昭和53年度採択と同時に着工し、1億6,400万円の事業費を投じて昭和56年度に完了しました。
昭和40年完成 均一型アースダム
・総貯水量 405,000立方メートル
・満水面積 3.953ha
・堤高 31.00m
・堤長 128.00m
潟尻ダムは第二ため池の下流部に位置し、昭和25年、この対策として水源拡張工事の施工により、関係農民の生活の安定と幸福を増進するべく七滝普通水利組合が中心となり、県を始め関係官庁に対して熱意ある陳情を重ねた結果、県において昭和26年より調査に取りかかり、翌27年に県営かんがい排水事業として採択され、29年度より着工の運びとなり、30年10月30日、六郷小学校において起工式典が挙行されました。
ダム地点の選定は、当初現在位置の上流1.5kmに予定し、地質調査を進めた結果、基礎地盤の不良からダムの築造は困難となり、最終的に現在の位置に決定しました。
工事は仮排水隧道、仮〆切盛土、築堤、取水装置、余水吐の順に施工されました。
仮排水隧道は取水隧道を兼ね、延長209.42kmを全長コンクリート巻立とし、仮〆切堤は本堤の一部を利用し、河川切替と同時に2万1,833立方メートルの盛土を31年度に完了、引き続きダム本体の築堤に着手しました。
そして、36年度までに堤高31.76m、堤長128.37m、盛土量15万8,231立方メートル(貯水量40万5,120立方メートル)の均一式土堰堤が完成しました。
また、取水装置は35年度、余水吐工事は35~36年度にそれぞれ施工し、37年度に全体の完成をみましたが、左岸地山の地質状態不良のため、底樋隧道との関係からもセメント注入による地盤強化に最大の努力を払いました。
築堤工事の最盛期にはブルドーザー5台を始め、スクレーパー3台、ダンプ3台を投入して年間5万立方メートルの盛土を施工し、延べ労力34万5,000人、セメント1,108トン、鋼材140トンなど多くの資材と2億2,840万円の事業費が投入されました。
昭和10年完成 中心コア型アースダム
・総貯水量 1,148,000立方メートル
・満水面積 14.01ha
・堤高 22.50m
・堤長 159.00m
当時の計画書によると、用水量は丸子川掛りで2.67立方メートル毎秒(第1期)で丸子川及び赤倉川の水量、有効雨量などを差し引いた不足水量は1,521,900立方メートルとなっており、これに対して湯田ため池841,472立方メートル、沸沢ため池871,525立方メートル合わせて1,712,997立方メートルの貯水量を確保して用水補給をなして旱魃(かんばつ)を解消する計画でした。
2ヶ処のため池はいずれも丸子川の上流に築造するもので、湯田ため池は荒川筋旧六郷町湯田部落の下流約300mの地点において川を締切るもので、沸沢ため池は丸子川の支流善知鳥川左岸側沸沢の凹地を締切り、旱魃時に丸子川に放流して用水の補給をしようとするものでした。
また、現況の取入口が不完全なため渇水時には取水に多くの労力と紛争を伴うことがあるので、田の尻堰、岩堰、湯の沢の各取入口及び関田の分水点にはコンクリート堰堤を設け、更に関田分水工を改修するとともに高梨への分水路を新設し、漏水を防止する計画でした。
工事は第一期工事として沸沢ため池の築堤と、これに附帯する波除張石工、集水路、取水設備導水路並びに余水吐放水路などで、昭和5年9月に着工し、総工費212,300円を投じて昭和10年に完成しました。
その最大水深は19.20m、水面積14ha、貯水量112万8,000立方メートルで、取水装置より善知鳥川に放流され、下流丸子川に合流後、関田分水工を通じて関係地域965haにかんがいされてきました。
その後、築造し50年以上も経過したため、その間風水害及び浸透水によってため池全体の老朽化が著しくなり、堤体、洪水吐、取水施設から漏水が見られ、特に取水施設の漏水は甚大で、加えて洪水吐の排水能力も不足していて、洪水時には能力不足により堤頂越流の危険がありました。
これら堤体の決壊原因となる要素を放置すると、自然災害の発生は確実で、その被害は40億円を超えるとされていました。そのため、国土保全及び民生の安定、人命尊重のためにため池の補強、改修を早急に実施する必要があり、昭和59年度から平成2年度にかけて改修工事が行われました。
昭和13年完成 中心コア型アースダム
・総貯水量 750,000立方メートル
・満水面積 11.01ha
・堤高 18.50m
・堤長 203.00m
一丈木ため池は、570haにも及ぶ水田を潤す、地域農業の重要な水源です。
周辺は一丈木公園となっており、標高1,060mの真昼山とため池とが一体となった景観は秋田30景に選定されています。また、池を囲むように植えられた300本の桜は、明治30年代半ばに植栽された樹齢100年以上のソメイヨシノで、春には毎年多くの花見客が訪れます。
池には、水鳥や魚が多く生息しており、中でも陸封型のサクラマスが多く見られます。毎年秋の土砂流しの際の生態系調査では、外来種の生息は確認されておらず、多様な生物が生息できる環境が守られています。
地域との関わりとして、地元小学生を対象とした学習会が開催され、ため池の役割や必要性を広く伝えるための取組が行われています。
平成22年には、農林水産省が選定する「ため池百選」に選定されました。
ため池百選とは、全国に約21万ヶ所あるといわれているため池の中から、生活への役割と保全の必要性を国民に理解してもらうために選定した100のため池です。
その選考にあたっては、「農業の礎」、「歴史・文化・伝統」、「景観」、「生物多様性」、「地域とのかかわり」の5点のうち、いずれか1つ以上が優れていることが評価基準となっています。